前回、条痕についてのお話をしていませんでした。そこで今回、その条痕色と鉱物の色に ついてお話したいと思います。 鉱物には自色と他色があります。この自色と他色が岩絵の具になるかならないかの分かれ 目です。結論から言うと他色の鉱物は岩絵の具にはならないのです。 まず水を思い浮かべてみて下さい。水は何色に見えますか?南の海ではエメラルドグリー ン。滝壷など水深の深い所では青。でも手のひらにすくって見るとそれらの色は消えてしま いますね。では何故色がついて見えたのでしょう?実は微量に含まれる金属イオンの影響な のです。 鉱物も水と同様、金属イオンによって色がついて見えます。現在展示してある藍銅鉱は透 明感のある結晶も産出しますが、自色の鉱物なので岩絵の具になります。でも僕の大好きな 水晶は、どんなに色がついて見えても他色の鉱物なので、岩絵の具にはならないのです。で は藍銅鉱と水晶は何処がどう違うのでしょうか? まず、他色の鉱物について説明します。他色の鉱物には本来色はありません。純粋なもの は白または透明な結晶となります。色がついて見えるのは微量に含まれる金属イオンや、放 射線などの影響により分子配列が変わるためなのです。このような発色はある程度、数が集 まらないと人間の目には色として認識されません。そのため、岩絵の具にしようと粉にして しまうと色を認識する為の絶対量が足りず、色が消えてしまうという訳です。 では何故、自色の鉱物は粉になっても色が残るのでしょうか?藍銅鉱で説明します。藍銅 鉱の化学式はCu2(OH)2(CO3)2です。注目していただきたいのはこの化学式の中にある『銅イ オン』です。藍銅鉱の藍色はこの銅によって付いているので、たとえ粉になっても色が残る のです。自色の鉱物のほとんどは藍銅鉱と同様、鉱物自体に色を出す成分があります。だか ら自色の鉱物は岩絵の具になるのですね。 それでは今回はこの辺で・・・ M.E.O.